仕事レポート No.11

漁師 高 孝一(たか こういち)さん

沖永良部島漁協には、正組合員数が現在33名。組合員の中で最も若い漁師歴6年の高孝一さんから、今回お話を伺いました。終始笑顔で話す高さん、漁師という仕事が本当に好きだということが伝わってきます。自分が語ることによって、若者が漁業に興味をもってくれたらいいなとおっしゃってました。

高孝一さん
【 高 孝一さん 】

漁師になったきっかけ

6年前、東京の会社を辞めて一時的に島に帰った時、漁師をやっている叔父の船に乗せてもらいました。船に乗って2、3日は船酔いが辛かったのですが、1週間すると自分の手で魚を釣り上げるという感覚が楽しくなり、漁師という職業を意識しました。

沖永良部島漁港
【 沖永良部島漁港 】

東京でも体を使う仕事をやっていたのですが、明らかに違うのは決められたことをこなすのではなく、自分で考えてやるということです。

頑張ったら頑張っただけの結果を得ることができ、逆にミスをしたら自分に返ってくるという、全て自分の責任でやることに引かれました。もちろん収入面の魅力もあります。

後継者育成プログラムを利用

鹿児島県の漁業協同組合連合会の新規就業支援制度を利用して、叔父の船で研修を受けました。支援制度の研修期間は1年間でしたが、1年で自立する自信がなく、引き続き船に乗せてもらい、操船の仕方、魚群探知機の見方、GPSの見方、船の故障時の対応など叔父のやり方を見て必死で覚えました。

先輩漁師に見守られながらの初出航

1年半くらい経った頃から自分の船を持ちたいと強く思うようになり、ネットで船を探しました。沖縄と大分に気になる船があったので、現地まで叔父と一緒に見に行き、大分の4.8トンの中古船を購入しました。購入費は、鹿児島県の沿岸漁業改善資金を利用しました。

高富丸
【 高富丸 】

その船には、自分の名前から採った「孝」と、漁師をやっていた父親の名前から「富」を採って「孝富(たかとみ)丸」と付けました。


孝富丸で、2日掛けて大分から帰ってきました。有難いことに、前の船主と改造をお願いした造船所の工場長が沖永良部島まで同乗してくれました。

初出航は、叔父を初め先輩漁師が近くで見守ってくれたのを今でも覚えています。初出航からしばらく先輩漁師が同乗してくれて、心強かったです。一方では、これから一人でやっていくプレッシャーもありました。

メインはソデイカ漁

11月から6月の8カ月間はソデイカ、7月から10月の4カ月間はキハダマグロ、アオダイ、アカマチを扱っています。

【 アオブダイ・カツオ 】

キハダマグロは、奄美群島でポピュラーな旗流しという漁法で釣り上げます。仕掛けに針を6本~7本付けますが、1回の仕掛けで釣れるのは1本20キロ~40キロのキハダマグロが2本~3本です。
漁影探知機に大きなマグロが映った時には、「来た!すげぇのが来た!!」と何とも言えない高揚感があります。キハダマグロは、高価格で取引される時と捕れすぎると低価格になるので博打に近いです。

ソデイカ
【 ソデイカ 】

ソデイカは、水揚げ量、価格ともに平均してよく、安定収入を得ることができます。ソデイカの価格は、ここ2、3年で倍になりました。

いかにして水揚げ量を増やすか

水揚げが思ったようにならない時には、先輩に相談します。どんな道具がいいとか今の時期だとどこで釣れるとか懇切丁寧に教えてくれます。仲間意識が強い先輩達に助けられています。

先輩漁師
【 先輩漁師 】

当然ですが、最新の道具に変えると水揚げ量は伸びます。設備投資は大きな出費ですが、思い切って新しい道具に変えると、水揚げ量、収入が増え、それで設備投資コストが賄え最終的には収入増になります。

水揚げ高を上げるためのもう1つの工夫は、鹿児島、沖縄の2つの市場の取引価格を比較して高い市場に出荷しています。

仕事のパターン

通常は、夜中の1時、2時に出港して、3、4時間掛けて島から25~30マイルの漁場へ行き、1泊2日して翌日の夜中に帰ってきます。1本20キロを15~18本で約400キロの水揚げがある日もあれば、1匹も釣れない日もあります。

水揚げ高は、年々増えていて倍増の年もあります。いつ水揚げ量が落ちるかわからないので、稼げる時に稼ぐことを心掛けています。

家族の存在は励み

稼動は、時化以外はほぼ出港していて年間150日くらいです。休みの時には、道具の手入れ、エンジンのメンテナンスをやりながら、2歳と0歳の子どもとの時間を楽しんでいます。

去年、92キロのクロマグロを釣り上げました。クロマグロを釣り上げるのは1年に1回くらいですが、改めて漁師の魅力を実感しました。

高孝一さん
【高孝一さん】

そのクロマグロを地元のスーパーがセリで落としたので、それを買って家族で美味しく食べました。感慨深かったですね。我が家では、ほぼ毎日魚を食べています。2歳の長男が刺身を美味しいと食べてくれるのは嬉しいです。

漁師を目指している人へ

漁師を目指している方に伝えたいのは、船の上で船酔いを我慢しながら1週間頑張れるかですね。後はやる気と根性です。私自身が何も知らない状態でしたが、3年前から一人で稼げているので、覚悟すればできると思います。

沖の漁場まで行って何が起こるかわかりません。何かあった時には自力で帰ってこなくてはいけません。常に覚悟が必要です。しかし、それに勝る喜びとわくわくの日々があります。

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