株式会社南国きのこ苑 代表取締役 末川 茂文さん
南国きのこ苑の代表取締役末川茂文さんからお話を伺いました。
南国きのこ苑では、免疫力アップ、アンチエイジングに効果がある食材として注目されている「きくらげ」を栽培、販売しています。
沖永良部島でのきくらげ栽培は約40年前から行われています。
昭和40年代から島内にある製糖会社南栄糖業で、さとうきびの搾りかすバガスの有効活用の検討が始まり、昭和51年にバガスを培地にしたきくらげの試験栽培に成功しました。
昭和59年には大型培養工場を建設し、本格的なきくらげの生産・販売が始まりました。
末川さんは、培養工場の建設に携り、その時にいつの日か自分自身できくらげの栽培をやってみたいと思ったそうです。
周年でできる事業を求めて
元々、ビニールハウスなど農業用の施設を建設する会社をやっていて、奄美大島から与論島までの農業施設の建設をカバーしていたのですが、夏場には閑散期となるために、周年でできる事業を探していました。
きくらげの培養法特許が20年経過し切れていることを知り、以前からやりたいと思っていたきくらげ栽培、販売会社南国きのこ苑を平成21年に設立しました。
きくらげは、国内生産比率が3%程度と低く、外食産業、食品会社などの国内産の安心安全な食材への意向が高まり、将来的に需要拡大が見込めると思っていました。
きのこ菌という目に見えないものを扱う難しさ
いざ、事業を始めてみると、紆余曲折の連続でした。
3年前の10月に、50m級の台風が3週間立て続けにきた時には、きくらげ栽培ハウスが飛ばされ、参りました。
その時の苦い経験から台風に強い施設を研究し、60m級の台風に耐えられる施設を作ることができました。
お金掛けて施設を作ったはいいが、台風被害を心配しながらでは安心したものづくりはできないと思いました。
きくらげの栽培は、きのこ菌という目に見えない胞子を扱う繊細な作業を要します。きのこ菌は、カビ、雑菌に敏感です。雑菌が入ってしまうときくらげは成長しません。特に、気温が上昇する7月から10月は雑菌が入りやすく菌床ができにくく苦労します。
それを防ぐために、人工的に冷却、クリーンルームの温度、湿度管理を徹底的に行います。
経験値ではなく、データに基づいて日々管理していますが、きくらげ栽培の難しさを痛感しています。
4カ月出荷できない状態が続いた
苦い経験にもめげず、新たなことにチャレンジしています。
ラーメン専用きくらげの商品化を目指して、国の6次産業事業を導入しました。
昨年の11月から今年の4月には、栽培ハウス、製品加工所、冷蔵庫、真空パック機の設備を増設しました。
設備を増設したのに、肝心の菌床が雑菌に犯されて10月まできくらげができませんでした。作ってもだめ作ってもだめの連続でした。1度菌床を作って結果がでるのに2週間くらいかかり、また、新たな方法を試すという繰り返しでした。
1カ月前の11月頃からやっと正常な菌床ができ、順調に出荷できています。
4カ月出荷できない状態だったため、お客さんにもご迷惑をお掛けし、会社自体も経営の危機でした。時間を掛けて原因を究明しクリアすることができました。
北海道から沖縄までの外食産業、食品卸、流通業、通販など100社くらいの取引先には、出荷できなかった原因の説明とお詫びをしてご理解いただきました。
実績に近い出荷量、出荷額の見込みが可能
失敗の連続だったため、ちゃんと生産ができることが何よりの喜びです。
きくらげは人工栽培のため、いつ頃どのくらいの量を出荷できるか見込みが可能です。
天候に多少は影響されますが、設備で補うことができます。
そして、直接取引のため自分たちで値段を決められ、出荷額の見込みも可能です。
農産物だと自然天候に左右されるため、そういうわけにはいきません。
生のきくらげの出荷をメインにしていますが、生で出荷できないものは乾物で出荷しています。
きくらげ栽培は捨てるものがなくロスがありません。
ここ数年、安心安全の国産品が求められているので、プライスはもう少し高くてもいいかと思いますが、開業当時より2割アップに留めています。高く売りたいのは、やまやまですが今のところ、経営努力で採算に合うプライスにしています。
加工品で付加価値のある商品づくりを目指す
来年には、6次産業事業の産物であるラーメン専用きくらげ、サラダ専用きくらげを商品化する予定です。スライスして味付けをして真空パックすることによって賞味期限が延びます。
付加価値を付けて単価の高い商品づくりができたらと思っています。
加工品を商品化することによって、新たな雇用も生まれてくると思います。
沖永良部島産のきくらげは、島内産のさとうきびの搾りかすバカスの栄養分がある菌床で作られているため、成長が早く生産者にとっては助かります。
バガスの栄養分を吸収したきくらげは、肉厚でぷりぷりで賞味期限が長いと取引先からは評価をいただいています。
島産のきくらげの強みを信じて、きくらげを増産していく計画です。
増産となると今の人員では捌けなくなるので、従業員も増やしたいと考えています。